質問が思いつかないと悩む人がつまずいているのは、頭の回転でも知識量でもなく、聞いている間の注意の向け先です。この記事では、質問をゼロから作るのをやめて、相手の話から拾う聞き方に切り替える手順を渡します。
短答 — 質問は作らず、拾う
会話の質問は、静かな部屋で仕上げる作文ではありません。相手が話した言葉の中から一つ選んで、続きを頼むだけで成立します。次の会話では、相手の話に出てきた聞き慣れない言葉や、さらっと流された出来事を一つつかまえて、「それ、初めて聞きました。もう少し教えてください」と返してみてください。質問というより、続きの注文です。それでも会話はきちんと前へ進みます。
頭が真っ白になる仕組み
質問が出てこない原因は、性格ではなく注意の配分にあります。「次に何を聞こう」と考え始めた瞬間、耳は相手の話から離れます。材料が入ってこないまま質問だけひねり出そうとするので、白紙から作文する状態になり、固まってしまう。質問が思いつかない人は、考えていないのではなく、考えすぎて聞き逃しているのです。
厚生労働省のキャリアコンサルティング関連テキストは、聴き手の基本姿勢の一つとして「相手が話そうとする話題を安易に変えたりせずについて行く」ことを挙げています。気の利いた新しい話題を差し出す義務は、聞き手には最初からありません。いまある話題について行くだけで、聞き手の仕事は足りています。
言葉を借りて返す手順
- 聞くことに注意を全部使う。 次の質問を考えるのをいったんやめ、相手の話に出てくる名詞と出来事を聞き取ります。ここが手順の半分です。
- 引っかかった言葉を一つ選ぶ。 知らない単語、初めて聞いた固有名詞、さらっと流された出来事。どれでもかまいません。
- その言葉を口に出して返す。 「その〇〇って、なんですか」でも、「それ、初めて聞きました。もう少し教えてください」でも。相手の言葉を借りているので、外れにくい質問になります。
- 答えの中から、また一つ拾う。 これで輪が閉じます。
この手順の利点は、記憶力も発想力も要らないことです。材料は常に、直前の数十秒の中にあります。
開かれた質問と閉じた質問の使い分け
同じテキストは、質問をイエスかノーで答えられる「閉じられた質問」と、そうでない「開かれた質問」に分けています。閉じられた質問は答えやすい反面、話が展開しにくい。開かれた質問は話が広がる反面、続けざまに使うと相手の負担になる。だから両方を使い分けます。
言葉を拾って返すときも、まず「〇〇なんですか」と閉じた形で軽く確かめ、相手が乗ってきたら「どんなふうにですか」と開く順にすると、相手は階段を一段ずつ上るように話せます。最初から大きく開いた質問を投げる必要はありません。
相手の反応別の分岐
- 続きを話してくれた — そのまま聞きます。次の質問はまだ考えなくて大丈夫です。
- 「大した話じゃないですよ」と流された — 無理に掘らず、「じゃあ、〇〇のほうはどうですか」と、拾っておいた別の言葉へ移ります。拾い置きが一つあると、撤退が怖くなくなります。
- 話が終わって沈黙になった — すぐ埋めなくてかまいません。間が続いたら「さっきの話、まだ気になっていて。戻ってもいいですか」と少し前の話題へ戻る。この一言は、聞き逃したときの修復にもそのまま使えます。
やりすぎと失敗の形
- 拾った言葉を連射する。 一つの答えから三つも四つも拾って聞き続けると、興味のつもりが尋問の圧になります。一つの答えに一問で十分です。重ねる癖の自覚がある人は、質問攻めになってしまうを聞き方から直すを先に読んでください。
- 珍しい言葉ばかり狙う。 相手が話したいのは、珍しい言葉より、自分が時間を使った出来事のほうです。地味でも本人の手が動いた話題を拾うほうが、続きは豊かに出てきます。
- 拾う前に評価を挟む。 「それはすごい」「変わってますね」と値踏みしてから聞くと、相手は次の言葉を選び始めます。拾って返すだけでよいのです。
次の一回の練習課題
次の会話で一回だけ。相手の話から言葉を一つ拾い、「それ、初めて聞きました。もう少し教えてください」と続きを頼んでみてください。うまく拾えなかったとしても、注意を「次に言うこと」から「相手の話」へ戻せていたなら、その回は成功です。会話のあとの一人反省会は、開かなくてかまいません。

