「もっと詳しく聞きたいのに、何と聞けばいいか分からない」。この悩みに必要なのはセンスではなく、質問を載せる型です。相手の話を一段深くする三つの型と、型の選び方、そしてやりすぎの止め方まで、まとめて扱います。
短答 — 型に載せれば掘れる
深掘り質問は、その場の閃きで作るものではありません。相手の話を三つの型のどれかに載せるだけで作れます。手順を頼む「過程」、いちばんを選んでもらう「山場」、前後の差を聞く「転機」。迷ったら山場の型で、「いちばん大変だったのは、どこですか」と聞いてみてください。答える範囲が「いちばん」に絞られているので、相手は記憶から選ぶだけでよく、考え込ませずに一段深く進めます。
「いいですね」で止まる理由
話が浅いまま終わるのは、興味がないからではありません。多くの場合、感想と質問を混同しているからです。「いいですね」「すごいですね」は受け止めの言葉であって、会話の球を相手に返していません。返ってくる球がないので、話がそこで止まります。
もう一つの理由は、深掘りを「相手の領域に踏み込むこと」だと思っている怖さです。実際の深掘りは、相手がすでに出してくれた話の、まだ話されていない部分を頼む行為です。踏み込むのではなく、開いている扉の奥を見せてもらう。この区別ができると、怖さはかなり軽くなります。
三つの型 — 過程・山場・転機
過程の型「どうやって」。 結果だけ語られた話に、そこへ至る手順を頼みます。「その店、どうやって見つけたんですか」「資格って、どうやって取るんですか」。人は自分が手を動かした手順なら、思い出しながらいくらでも話せます。
山場の型「いちばん」。 長い経験に、頂点を一つ選んでもらいます。「いちばん大変だったのは、どこですか」「いちばん覚えている失敗って何ですか」。選ぶだけで答えられるので負担が軽く、しかも選ばれた話には、選ばれた理由と物語が付いてきます。
転機の型「何が変わった」。 変化の前後を対で聞きます。「始める前と後で、いちばん変わったことは何ですか」。過去と現在の差を聞かれると、人は自分の歩いた距離を振り返りながら話します。
三つに共通するのは、どれも相手の話の外へ出ていないことです。型は掘る場所を変えるのではなく、同じ場所の深さを変えます。
どの型から使うかの選び方
- 完成品や結果の話が出たら、過程の型。
- 長く続けている話や経験談が出たら、山場の型。
- 昔と今をまたぐ話が出たら、転機の型。
迷ったら山場の型からで大丈夫です。範囲がいちばん狭く、外したときの負担もいちばん小さいからです。一つ掘れたら、その答えの中の言葉を拾って次を選びます。材料の拾い方は質問が思いつかないを聞き方から直すで扱っています。
相手の反応別の分岐
- 想定より重い話が出てきた — 掘り続けず、まず受け止めます。「そうだったんですね」と一度置いて、続きを話すかどうかは相手に任せる。深掘りの成功は、深さではなく相手が自分の言葉で話し終えられたかで測ります。
- 「うーん、特にないですね」 — 型を替えます。山場で出なければ過程へ。それでも出なければ、その話題は本人の中でまだ言葉になっていないだけです。別の話題へ移りましょう。
- 答えにくそうな顔をした — 修復の一言を出します。「答えにくいことを聞いていたら、ごめんなさい。別の話でも大丈夫です」。撤退も聞き方の技術のうちです。
やりすぎと失敗の形
- 型の三連発。 過程、山場、転機と続けて当てると、会話が取材になります。一つ掘ったら、自分の受け止めを一文返してから次へ。連発しやすい自覚がある人は質問攻めになってしまうを聞き方から直すを読んでください。
- 出ていない話題に型を当てる。 相手がまだ出していない領域への質問は、型に載っていても詮索です。
- 前置きの長い質問。 深い質問ほど長くなると思われがちですが、逆です。型に載った質問は短くなります。長くなり始めたら、型から外れている合図です。
次の一回の練習課題
課題は一回分だけです。次の会話で相手の経験談が出たら、「いちばん大変だったのは、どこですか」を試してください。相手の声の調子が変わったら、型が場所に合った合図です。変わらなくても、あと二つ型が残っていると知っていれば、それで十分です。